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投資 — 期待リターンとリスクの設定

FIREシミュレーションの結果を、良くも悪くもいちばん大きく揺らすのが投資の前提です。期待リターンを1%変えるだけで、数十年後の資産は大きく変わります。

このページは、まず「何をどこに入れるか」を順に説明し、期待リターンがどう解釈されるかという少し難しい理屈は最後にまとめます。理屈が気になる人は、先に末尾の「参考」を読んでも構いません。

対象画面

「資産運用」タブ

目標配分・期待リターン・口座残高・運用戦略は、世帯で共通の設定です。画面後半の「個人別設定」に並ぶiDeCoや目的別・個別資産(サテライト)だけは、本人・配偶者タブで人ごとに分かれます。

このページで分かること

  • 資産配分・期待リターン・リスクの入れ方

  • 課税口座・非課税口座(NISA)の入れ分けと、取り崩される順番

  • 期待リターンが「幾何平均(CAGR)」として扱われる意味(末尾の参考)

1. 資産配分・期待リターン・リスクを入れる

最初に、目標とする資産配分を決めます。資産クラスごとのスライダーを動かして、株式・債券などの比率を組みます。現金・預金の枠は、他を動かすと残差を自動で吸収します。

各クラスには "期待リターン""リスク" の欄があります。リスクは、年ごとのリターンのブレ幅(標準偏差)のことで、この値が大きいほど、良い年と悪い年の振れ幅が大きくなり、モンテカルロや暴落テストでの下振れも深くなります。

期待リターンとリスクには、資産クラスごとに次の初期値が置かれています。リスク(標準偏差)は過去20年・円建ての実績を参考、期待リターンはその実績から円安や金利低下といった一時的な追い風を差し引いた、保守的なフォワードの幾何平均です。

資産クラス 期待リターン(初期値) リスク(初期値)
国内株式 4.0% 16.9%
外国株式 7.0% 18.0%
国内債券 1.0% 2.5%
外国債券 3.0% 9.4%
現金・預金 0.1% 0%

外国株式の7.0%は、MSCI ACWI(全世界株)の円建て実績から円安寄与を剥落させた水準で、オルカンを積み立てている人の感覚に近い数字です。いずれも配当込み(トータルリターン)を基準にしていて、課税口座の配当・譲渡益への課税は、この数字とは別に口座区分ごとの計算で差し引かれます。

各クラスの利回り・リスクは "独自設定" で自由に上書きできますが、現金・預金のクラスだけは上書きできません。 「過去実績より辛めに見ておきたい」と思えば、利回りを下げた悲観シナリオで試せます。上書きした値は、ダッシュボードの試算・モンテカルロ分析・感度分析のすべてに反映されます。ポートフォリオ全体の期待リターンとリスクは、各クラスの値を配分比率で加重平均して自動表示されるので、配分を動かすたびに全体像が更新されます。

過去実績は未来の約束ではない

デフォルト値は過去の実績をなぞったものであって、将来この通りになる保証はどこにもありません。

利回りを何段階か下げてみて、それでも計画が持つかを確かめる。そういう使い方のほうが、この欄の値打ちが出ます。

2. 口座ごとに残高を入れる

資産の残高は、口座の種類ごとに分けて入れます。ここが取り崩し時の税金に効いてきます。用意されているのは次の4区分です。

口座区分 入れる残高 売却時の課税
現金・預金 残高
特定口座 "評価額(時価)""累計投資額(簿価)" 含み益に約20.315%
新NISA これまで使った枠(簿価の合計) 非課税
旧NISA 残高+ "非課税終了年" 非課税(終了年に特定口座へ時価で払い出し)

特定口座で時価だけでなく簿価も入れるのは、その差額(含み益)を正しく出すためです。 新NISAは、使った枠から生涯投資枠の残りが自動計算されます。旧NISAは非課税終了年を設定すると、その年に特定口座へ時価で払い出される動きまで再現されます。

3. 運用戦略・生活防衛資金

資産配分の下には、家族全体で共通の「運用方針」を決めるブロックが続きます。数字を入れる場所というより、崩し方や守り方の方針を決めるところです。

  • 運用戦略・NISA設定: 取り崩しの優先順位(表示のみ。後述)と、 "NISAへの自動詰め替え" トグルがあります。詰め替えをオンにすると、特定口座の資産を売ってNISAの非課税枠を最速で埋めるように資金を動かします(スイッチング)。
  • 生活防衛資金の設定: 暴落時でも運用に回さず常に持っておく現金の目標額を入れる欄と、 "暴落時はこの現金を優先的に取り崩す" トグルの2つです。トグルをオンにすると、相場が沈んだ局面で、値下がりした投資資産を売る前にこの現金クッションから先に取り崩します。ここを厚めに積んでおくほど、暴落直後に安値で売る場面を減らせます。

4. 取り崩される順番

生活費が足りないとき、LIFIREは決まった順番で口座を崩していきます。この順番は固定で、変更はできません。 画面には順序が表示されますが、並べ替えの操作はありません。非課税のNISA枠をできるだけ後ろに残す設計です。

  1. 現金・預金 — 生活防衛資金の目標額を超えているぶんから
  2. 特定口座 — 課税される利益がある口座から先に
  3. 旧NISA — 非課税枠のうち先に期限が来るもの
  4. 新NISA — 非課税枠を最後まで温存する

口座ごとの扱いの差は1年で見れば小さくても、非課税枠を何十年後ろに残せるかで最終的な手残りはじわじわ変わります。取り崩し順序の考え方はNISA戦略に詳しくまとめています。なお、iDeCoはこの列に入らず、設定した受け取り方で別枠で扱われます。

ストレステスト(暴落イベント)

資産運用タブの下のほうに、他の設定とは少し独立した "ストレステスト(暴落イベント)" の枠があります。ここでは、特定の年齢で起こる暴落を自分で仕込めます。 "発生年齢""継続期間""下落率""対象アセット" (すべてか特定の資産クラスか)を指定して、暴落イベントを複数追加できます。

ここで加えた暴落は常設の前提として、ダッシュボードの試算にもモンテカルロ分析にも反映され続けます。 「大きな下落が55歳で来たら」「特定の資産だけ暴落したら」といった自分なりの悪いシナリオを、計画に織り込んだうえで結果を眺められます。

決まった型の暴落を一時的に当てて「暴落なし」と比べたいだけなら、これとは別に、分析ページの暴落テストを使い分けてください。あちらはプリセットの5パターンを一時的にぶつけて比較する機能で、通常の資産推移そのものには影響しません。

資産推移予測プレビューで口座別の伸びを確かめる

画面の下部には「資産推移予測(口座別)」のプレビューが表示されます。設定した取り崩し順序と期待リターンを反映した各口座の時価評価額の推移が、特定口座・NISA・iDeCo・現金の色分けで年齢ごとに積み上がります。 集計欄には現金を除いた最終的な投資資産の評価額が出ます。

期待リターンやリスクを上書きしたときは、このグラフの傾きや最終残高がどう動くかで、その前提が結果に与える大きさを体感できます。iDeCoの残高もここに独立した帯として現れるので、iDeCoを設定したあとの伸びもここで確認できます。

参考: 期待リターンは「幾何平均」で計算される

LIFIREに入れる期待リターンは、幾何平均(CAGR、毎年の中央値としての成長率)として扱われます。これは「毎年この利回りで複利に増えていく」中心線を引くという意味です。ダッシュボードの試算はこの幾何平均をそのまま毎年かけて資産を伸ばし、モンテカルロ分析でも、この値が結果の分布の真ん中(中央値)に来るように設計されています。だから、ダッシュボードの一本線とモンテカルロの中央値は、同じ入力なら食い違いません。

ネットで見かける「年平均◯%」は算術平均(単純な年平均リターン)のことが多く、これとは意味が違います。同じ資産でも、変動が大きいほど幾何平均は算術平均より低く出ます。次の例で、その差を確かめてください。

算術平均と幾何平均、何が違う?(クリックで例を開く)

100万円を2年運用して、1年目が+50%、2年目が−40%だったとします。

  • 算術平均: (+50% − 40%)÷ 2 = +5%(プラスに見える)
  • 実際の残高: 100万 → 150万 → 90万円(2年で−10%)
  • 幾何平均: 1年あたり約 −5.1%(こちらが実感に近い)

0 50 100 150 開始 1年後 2年後 150万 90万 期待+5%/年

値動きが大きいほど、算術平均は「見かけ上」高く出ます。LIFIREが幾何平均を使うのは、この見かけの上振れを避けて、実際に手元に残る成長率で計算するためです。

次に読む

投資の前提を置いたら、次はそれを実際の戦略や検証につなげていきましょう。iDeCoや個別資産の細かい設定、NISA枠の使い方、相場の変動を織り込んだ成功率の見方が、ここからの続きです。