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分散投資は何銘柄で十分?「20銘柄」の根拠から調べ直した
この記事で伝えたいこと
Tang(2004)のランダム・等金額モデルでは、20銘柄で「分散可能リスク(分散ベース)」の95%を平均的に減らせるという結果があります。ただし、「20銘柄あれば十分」「20銘柄持てばインデックスと同じ」という意味ではありません。何銘柄が十分なのか論文を調べてみました
こんにちは、金育SEのまさ(@kinikuse)です。
少し前に、ある個別株投資家さんの毎年の資産推移ツイートが引っかかりました。その方は多数の個別株に分散して運用してるにも関わらず、オルカン一本足打法の私の資産推移と似通ってました。
金額やお相手の情報はこの記事では出しません。そもそも総資産の推移には入金や現金比率も混ざるので、「運用成績が同じだった」と言うつもりもありません。
気になったのは別のところです。
個別株って、たくさんの銘柄に分散すると、結局インデックスみたいな動きになるんじゃないの?
何銘柄まで持てばいいのか、気になりました。
うろ覚えでしたが、証券アナリストのテキストには「20銘柄くらい持てば、インデックス投資と似た動きになる」とか書かれてた気がする…。
が、最近大好きなチャッピーくんに調べなおしてもらったらいろいろ勘違いしてました(笑)
この記事で分かること
- 「20銘柄」という数字はどこから出てきたのか
- 銘柄を増やすと、何のリスクが減るのか
- なぜ多数の個別株を持ってもインデックスと同じにはならないのか
- それでも私がオルカンを続ける理由
分散投資は20銘柄で十分?私の記憶の元ネタをたどる
証券アナリストのテキストは「20銘柄で十分」とは言っていなかった
「20銘柄」という数字をどこで覚えたのか。
元ネタは、証アナの「株式投資」テキストでした。「分散投資の効果」というグラフが載っており、銘柄数を増やすほどリスクが下がり、やがて市場全体に関係するリスクへ近づいていく図で、横軸は10〜60銘柄です。1
私には、20銘柄あたりから曲線がかなり寝て見えました。
「ああ、20銘柄くらい持てば分散効果はだいたい取れるんだな」
たぶん、こんな感じで覚えたんだと思います。
でも本文を読み直すと、「20銘柄で十分」とは書いていません。 書いてあるのは、銘柄数を増やすと固有リスクは小さくできる一方、市場リスクは減らせない、という話。しかも同じページには、実際の市場では同じ業種の銘柄に共通した動きがあるとも書かれています。1
分散で薄くなるのは、まず「その会社だけに起きる値動き」です。
私はこの話を、時間がたつうちに「アルファが消える」に変換して覚えていました。アルファは、市場平均などの基準では説明できない超過収益の話です。会社固有のリスクとは別物です。ここは普通に勘違いしていました。
別の論文では、20銘柄で分散可能リスクの95%を減らせる
面白いのは、20銘柄という数字そのものが完全な勘違いでもなかったことです。
Tang(2004)は、銘柄をランダムに選び、同じ金額ずつ持つ単純な分散投資を分析しています。無限に銘柄があると仮定した場合、20銘柄で分散可能リスク(分散ベース)の95%を平均的に減らせると示しました。100銘柄まで増やすと99%です。2
数字だけ見ると、昔の私がグラフから受け取った感覚にかなり近いです。下のグラフはTangの式をもとに、1銘柄のときに残っている分散可能リスクを100として描き直してもらいました。20銘柄では5、100銘柄では1まで下がります。
Tang(2004)のナイーブ分散モデルをもとに作成。無限母集団からランダムに選んだ銘柄を等金額で保有する場合の、分散ベースの期待値です。1銘柄時の分散可能リスクを100%としています。実際の特定ポートフォリオのリスクを示すものではなく、市場全体に共通するリスクは別に残ります。
1銘柄から2銘柄なら、残る分散可能リスク(分散ベース)は100→50。10銘柄なら10、20銘柄なら5です。総リスクや値動きの標準偏差が、この割合まで下がるという意味ではありません。 最初の数銘柄で一気に下がり、その後はだんだん平らになります。私が昔見た図で「20銘柄くらいかな」と思ったのも、まあ分からなくはない。
でも、このグラフだけ見て「20銘柄が正解」とするのは早いです。
「何銘柄なら十分?」に一つの答えはなかった
20銘柄で95%なら、もう20銘柄でいいじゃん。私は一瞬そう思いました。
曰く、研究によって答えが違うらしい。
| 出典 | 何を見ているか | 結果の例 |
|---|---|---|
| Tang(2004) | ランダム・等金額の分散投資で、分散可能リスクをどこまで減らすか | 20銘柄で95%を平均的に除去 |
| Statman(1987) | ランダムに選んだ株式で「十分に分散された」状態を考える | 30〜40銘柄 |
| Zaimovicほか(2021) | 1952〜2021年の150文献を整理 | 誰にでも使える最適銘柄数はない |
Statman(1987)は、当時よく言われていた「10銘柄くらいで分散効果はほぼ尽きる」という考えに対し、少なくとも30銘柄、条件によっては40銘柄必要だとしました。さらに2021年のレビュー研究は、150の文献を整理したうえで、市場・時期・投資家を問わず使える最適な銘柄数は存在しないとまとめています。34
なぜ数字がこんなに変わるのか。「十分」の意味が違うからです。
分散可能リスクを95%減らせれば十分なのか。市場指数からのブレをもっと小さくしたいのか。どの市場の株を選ぶのか。等金額なのか、銘柄ごとに比率を変えるのか。条件を変えれば答えも変わります。
「何銘柄持てば正解?」という問い自体に、万能な答えはありません。
じゃあ個別株を分散するとき、何を見ればいいのか。今の私は、銘柄数だけでは決めません。20という数字をゴールにせず、業種・国・投資スタイル・1銘柄あたりの比率まで見る。 「何銘柄?」への実用的な答えは、こっちだと思っています。
私の「20銘柄」という記憶は、方向としてはそこまで変ではありませんでした。でも「20銘柄で十分」というルールにしてしまったのは強すぎた。さらにアルファの話まで混ぜたので、だいぶ別物になっていました。
人間の記憶、信用ならないですね。証アナの知識は儚すぎる(笑)
銘柄数を増やしても、インデックスと同じにはならない
今回、私が最初に考えたのは「たくさんの個別株へ分散すると、結局インデックスに近づくのでは?」でした。これも半分は合っています。
会社ごとの固有リスクが小さくなれば、ポートフォリオ全体では市場や業種など、複数の会社に共通する動きが相対的に目立ちます。でも、銘柄数だけでは決まりません。
会社ごとのクセは薄れても、業種や投資スタイルのクセは残る
たとえば20銘柄持っていても、全部半導体株なら半導体業界の影響を強く受けます。証アナのテキストでも、同じ業種には共通した動きがあると書かれています。1
高配当株をたくさん持つ場合も同じです。MSCIには、全世界株式のMSCI ACWIから高配当株など一定の条件で銘柄を選ぶ「MSCI ACWI High Dividend Yield Index」があります。2026年8月末時点で713銘柄もありますが、元のMSCI ACWIとは別の指数です。5
713銘柄あっても「市場全体そのもの」にはなりません。
大事なのは銘柄数だけでなく、何をどんな比率で持っているかです。
それでも値動きが似て見えることはある
一社一社の影響が小さくなるほど、市場全体に共通する動きは見えやすくなります。
オルカンが連動を目指すMSCI ACWIも、世界の大型・中型株を広く持つ指数です。2026年8月末時点で2,458銘柄、世界の投資可能な株式の約85%をカバーしています。6
「全世界株式」といっても、各国を同じ比率で持つわけではありません。市場規模の大きな国や企業の影響を強く受けます。外国株を円で見ていれば為替も共通して効きます。
だから、多数の個別株へ分散したポートフォリオとオルカンの値動きが、ある時期に似て見えること自体は不思議ではない。
ただ、今回の二人(オルカン投資家と個別株投資家)の推移が似た理由を「これです」と特定することはできません。相手の入金額も現金比率も、細かい売買も分からないからです。
過去に似て見えても、未来まで同じとは限らない
最初は、もっと単純な記事になると思っていました。
「個別株をたくさん持つとインデックスみたいになる。だったらオルカンでいいじゃん」
そんな感じです。調べたら、当然のように違いました。
個別株を分散しても、業種や国、高配当・成長株といった選び方の違いは残ります。市場環境が変われば、その違いが成績の差として大きく出ることもあります。今回たまたま似て見えたとしても、5年後も10年後も似る保証はありません。
高配当株が強い時期もあるでしょうし、大型の成長株が強い時期もある。米国以外が伸びる時期だってあるかもしれません。私は、それを事前に当てられる気がしません。
以前、オルカン投資は成功だったかという記事で、半導体株などの爆益を見ると普通に悔しいと書きました。今もそこは変わりません。個別株で大きく増やした人を見れば羨ましいです。
でも今回調べて、別の意味で気が楽になりました。
将来どの投資スタイルが勝つか分からないなら、私は「当てる仕事」を自分で増やさなくていい。
それでも私はオルカンを続ける
個別株や高配当株を否定したいわけではありません。企業分析が好きな人なら、それ自体が楽しいでしょう。配当金を定期的に受け取りたい人にも、高配当株を選ぶ理由があります。
私の場合は違いました。
私は今、配当金が欲しいわけではありません。
個別株を持つなら、どの会社を持ち続けるか、どの会社を新しく買うか。その判断を自分で引き受けます。決算をどこまで追うか、減配や不祥事でどうするかも自分次第です。そういう判断そのものを楽しめる人もいると思います。
私は、そこにあまり時間を使いたくないんですよね。
オルカンなら企業ごとの入れ替えは指数と運用会社側でやってくれます。私は市場全体を持つと決めて、あとは自分の生活に時間を使える。
オルカンが今後いちばん儲かると分かったから選ぶわけではありません。何が勝つか分からないままでも続けやすいから選びます。
この結論は、調べる前と同じ「オルカンを続ける」です。でも理由は変わりました。
最初は「分散した個別株も結局インデックスみたいになるから、オルカンでいい」と思っていた。今は「分散しても違いは残るし、どちらが勝つかは分からない。それでも私は銘柄を選び続ける仕事をしたくないから、オルカンでいい」です。
こっちの方が、自分の投資方針としてはしっくりきます。
まとめ
- Tang(2004)のランダム・等金額モデルでは、20銘柄で分散可能リスク(分散ベース)の95%を平均的に減らせる
- ただし「20銘柄で十分」「20銘柄で総リスクが95%減る」という意味ではない
- 分散で主に薄れるのは会社固有のリスクで、アルファとは別の話
- 最適な銘柄数には普遍的な答えがなく、銘柄数を増やしても業種・国・投資スタイルの違いは残る
- 私は将来の勝者を当てたり、個別企業の保有判断に時間を使ったりしたいわけではないので、オルカンを続ける
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他人の爆益を見て「自分の投資はこれでいいのか」と考えた話はこちらです。今回の記事は、そこからもう一歩「分散すると何が起きるのか」を調べた続編に近いです。
オルカンが連動を目指すMSCI ACWIや、全世界株式の指数の違いはこちらで詳しく整理しています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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投資の最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
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日本証券アナリスト協会『証券アナリスト基礎講座テキスト 第2分冊』第6章「株式投資」(菅原周一)、p.17、図表6-9「分散投資の効果」。公式サンプルPDF ↩↩↩
-
Gordon Y. N. Tang, “How efficient is naive portfolio diversification? an educational note”, Omega, Vol.32, Issue 2, 2004, pp.155-160. DOI: 10.1016/j.omega.2003.10.002. ScienceDirect ↩
-
Meir Statman, “How Many Stocks Make a Diversified Portfolio?”, Journal of Financial and Quantitative Analysis, Vol.22, Issue 3, 1987, pp.353-363. DOI: 10.2307/2330969. Cambridge Core ↩
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Azra Zaimovic, Adna Omanovic, Almira Arnaut-Berilo, “How Many Stocks Are Sufficient for Equity Portfolio Diversification? A Review of the Literature”, Journal of Risk and Financial Management, 14(11), 551, 2021. MDPI ↩
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MSCI, “MSCI ACWI High Dividend Yield Index”. 2026年8月31日時点で713銘柄。MSCI公式 ↩
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三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の対象インデックス」では、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)への連動を目指すと説明。公式FAQ MSCI ACWIは2026年8月31日時点で2,458銘柄、世界の投資可能株式機会の約85%をカバー。MSCI公式 ↩
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