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子ども3人で40歳FIRE。1.5億円あっても3回に1回はお金が尽きる
この記事で伝えたいこと
子ども3人で40歳FIREは成立するのか。架空のモデルを自作のFIREシミュレーターLIFIREに入れて計算しました。1.5億円で完全リタイアしても、お金が尽きる確率は36%。でも月20万円だけ働き続ければ18%まで下がります。多子世帯の大学無償化が下の子には効かない話つき。
こんにちは、金育SEのまさ(@kinikuse)です。
前回の記事では、40歳・単身・1億円でFIREした人が直後に暴落を食らったらどうなるかを計算しました。今回はその続編です。
きっかけは、しょうもない空想です。うちは子どもが2人なんですが、たまに「3人いたら賑やかで楽しいだろうな」とふんわり考えることがあって。実際に計画しているわけでもないし、あとで書く資産額も我が家の数字とはまるで違うので、本当にただの空想なんですけど。そこから「じゃあ3人だったら、お金の側はどう変わるんだろう」と気になって、計算してみたのがこの記事です。
今回の主人公
40歳の共働き夫婦。夫婦とも正社員で、本人900万・妻300万の世帯年収1,200万円。子どもは8歳・4歳・3歳の3人です。
「ここまで二人とも全力で走ってきました。でも、そろそろアクセルを緩めたい。収入が下がってもいいから、子どもといられる時間がほしいんです。……でも子ども3人ですし、これから教育費もかかりますよね。仕事、辞めても大丈夫なんでしょうか」
こんな相談があったとしたら。数字はどう答えるんでしょうか。
先に用語をひとつ。この記事で何度も出てくる「サイドFIRE」は、資産の取り崩しと労働収入を組み合わせるFIREのこと。完全リタイアはしません。今回はこれが主役です。
あと、いつもの注意書きを。これは私自身の数字ではありません。下に書く条件はぜんぶ架空のモデルケースです。私の資産額は内緒。笑
検証したのは、こんな40歳・子ども3人の世帯
条件はこう置きました。
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 年齢・家族 | 40歳夫婦(1986年4月生まれ) 子3人(8歳/4歳/3歳) |
| 世帯年収(FIRE前) | 1,200万円(本人900万・妻300万) |
| 金融資産 | 1.5億円 ・現金1,350万/NISA夫1,800万/NISA妻1,800万/特定1億50万 |
| 生活費 | 基礎生活費18.3万円/月 +養育費4.2万円/月 × 3人 |
| 住居費 | 賃貸12万円/月 |
| 車 | SUV/ミニバン1台(2023年式) 維持費 年約74万円 2033年に1回買い替え、2039年3月まで保有 |
| 年金 | 65歳から世帯 約252万円/年 本人 約11.9万円/月・妻 約9.1万円/月 |
| 資産の前提 | 外国株 期待リターン7.0%(幾何平均) リスク(標準偏差)18.0% インフレ1.5%/100歳まで |
年金は割引なしです。制度が今のまま維持されて、満額もらえる前提。ここを削ると数字はもっと悪くなります。
引出率の分子に、教育費と車の維持費は入っていません(大事な注意)
後で「引出率3.5%なのに36%も失敗する」という、一見おかしな数字が出てきます。からくりはここです。
LIFIREの引出率は生活費と住居費だけを資産で割った数字で、この世帯だと年約520万円 ÷ 1.5億円=3.5%。
でも実際に口座から出ていくお金には、これに教育費と車の維持費が乗ります。表示される引出率より、財布はずっと重いんです。
もうひとつ。中学受験の塾代だけは、他の教育費(1.5%)と違って年3%固定でインフレします。学習塾市場の値上がりが速い実態に合わせた仕様で、ユーザー側では変えられません。後で出てくる「中学から私立」が重いのは、これも効いています。
まず思考実験。1.5億円で完全リタイアしたら
最初は極端なほうから。夫婦とも40歳できっぱり辞めて、あとは1.5億円を取り崩すだけ。子ども3人の進路を3パターンに振って、それぞれ2,000回ずつ回しました。
| 子どもの進路 | 100歳までにお金が尽きる確率 |
|---|---|
| 全公立(小中高公立・大学国公立) | 35% |
| 大学から私立(小中高公立・大学私立文系) | 36% |
| 中学から私立(中学受験+中高私立・大学私立文系) | 49% |
全部公立でも3割超。中学から私立にすると、ほぼコイントスです。
念のため書いておくと、これは思考実験です。40歳・子ども3人で1.5億円を貯められるかどうかは、まったく別の問題ですからね。それでも「1.5億円あれば余裕でしょ」という感覚が、どのくらいズレているかを見る材料にはなります。
面白かったのは、お金が尽きる年齢の中央値が59〜63歳だったこと。FIREしてから19〜23年後です。子どもの教育費が終わったあと、かなり経ってから効いてきます。教育費で転ぶんじゃなくて、教育費で削れた元本が20年後に足りなくなる。そういう順番なんですよね。
ついでに確認したんですが、破綻はすべて資産全体の枯渇型でした。現金だけ先に尽きて売れない資産が残る、みたいな詰まり方(流動性破綻)は0件。細かい話なので深追いはしませんが、少なくとも現金の置き方が悪いわけではなさそうです。
大学より、中学受験のほうが重い
さっきの表をもう一度見てください。差の付き方が、けっこう意外でした。
差が付いているのは、大学じゃない
大学を国公立から私立文系に変えても、35%が36%になるだけ。誤差に埋もれる程度の差です。ところが中学受験をして中高を私立にすると、49%まで跳ねます。
理由は2つあると思っていて、期間と、インフレ率です。
理由1: 9年ぶん、しかも一番きつい時期に重なる
大学の私立と国公立の差は4年ぶんです。対して中学受験は、塾代が小4から小6の3年、私立の学費が中高で6年。合計9年ぶん積み上がります。
しかもこの9年、40代前半から50代前半、つまりFIRE直後の一番きつい時期にまるごと重なります。前回の記事で書いた「取り崩しの序盤に減らされると効く」という話と、同じ構図です。同じ金額でも、いつ出ていくかで傷の深さが変わる。
理由2: 塾代だけ、インフレ率が違う
もうひとつが塾代のインフレです。さっき箱の中で書いたとおり、LIFIREでは中学受験の通塾費だけ年3%固定で伸ばしています。一般物価(1.5%)の倍です。
金額はこうです。
| 学年 | 年間の通塾費 |
|---|---|
| 小4 | 70万円 |
| 小5 | 95万円 |
| 小6 | 140万円 |
3人ぶんで、しかも年3%で膨らんでいく。10年後に小4を迎える子の70万円は、その時点で94万円になっています。
「大学の学費が高い」ってよく言われますけど、少なくともこのモデルでは、そこじゃなかった。
多子世帯の大学無償化が、下の2人には効かない
計算していて一番びっくりしたのがこれです。
条件は「扶養の子が3人以上いる期間に、在学していること」
2025年度から、扶養している子が3人以上いる世帯を対象に、大学等の授業料と入学金が減免される制度が始まりました。子ども3人なら当然フルで使える、と思うじゃないですか。
使えません。正確には、上の子だけ使えて、下の2人には一円も適用されないんです。
条件が「扶養している子が3人以上いる期間に、大学に在学していること」だから。ポイントは、判定されるのが「産んだ人数」ではなく「いま扶養している人数」だという点です。上の子が卒業して扶養から抜けた瞬間、3人きょうだいの世帯でも「多子世帯」ではなくなります。
3人の学年を並べると、上の子だけが間に合う
言葉だと分かりにくいので、8歳・4歳・3歳の3人が、いつ何年生なのかを並べてみました。
グラフの右端、青い棒に注目してください。第1子が大学にいる4年間は、まだ下に2人いるので扶養が3人。減免が効きます。
問題はその次です。第1子が卒業して扶養から外れた、その同じ年に第2子が大学へ入ります。1年もずれていない。第3子も同じです。
逸失は約612万円。しかも制度どおりの動き
結果、下の2人は入学金も授業料も一度も減免されません。
- 第1子: 入学金26万円 + 授業料70万円/年 × 4年 → 適用
- 第2子・第3子: 一円も適用なし
取り逃した金額は2人合わせて約612万円。
これ、LIFIREの不具合じゃありません。制度の設計どおりの動きです。第1子と第2子が4歳差で、大学が4年制。だから在学期間がきれいにすれ違ってしまう。8歳・4歳・3歳というわりと詰まった年齢差でも、こうなります。
制度を責めたいわけではなくて、自分の家の子の年齢差で並べてみないと分からないのが厄介なんですよね。平均や制度紹介の記事を読んでいるだけでは、たぶん一生気づきません。
ちなみに、我が家の上2人の年齢差は、このモデルとまったく同じです。つまり冒頭の空想どおり3人目がいたとしても、減免を受けられるのは上の子だけ。下の子たちには回ってきません。
抜け道が1つだけあって、上の子が大学院まで進んで扶養に残ってくれれば、扶養3人の期間が2年延びて下の子に間に合います。でも、そのために大学院に行かせるって順番がおかしいですよね。...厳しい...
減免が効いている年は、グラフのツールチップに「多子世帯授業料減免」の行が出ます。上は第1子が大学4年のとき。この行が出るのは第1子が在学している間だけで、第2子・第3子の大学期間には出てきません。 自分の家の並びで確かめたい人は、ここを見てください。
【本題】完全リタイアをやめたら、どこまで戻るか
ここからが本題です。
先に答えを書きます。月20万円だけ働き続ければ、18%まで下がります。
完全リタイアで36%は、正直きつい。でも「完全に辞める」以外の選択肢を潰す理由にはなりません。夫婦とも辞めるのをやめて、本人だけ40歳から60歳までの20年間、収入を落として働き続けたらどうなるか。進路は「大学から私立」で固定して、月収だけを振ってみました。
月20万円で、前回の単身1億円を下回る
完全リタイアの36%が、月10万円で27%、月20万円で18%、月30万円で12%。素直に効きます。
注目してほしいのは月20万円です。前回の記事の「単身・1億円で完全リタイア」は24%でした。子ども3人でも、月20万円だけ働き続ければ、単身で1億円持って完全リタイアするより安全側に立てるんです。
お金が尽きる年齢の中央値も、完全リタイアの63歳から、月20万円なら75歳まで後ろにずれます。
資産が1億円しかなかったら(数字がきつくなるので折りたたみ)
同じ検証を資産1億円でも回しています。完全リタイアで76%、月20万円まで働いても48%。1.5億円とは景色がまるで違います。
ただ、この76%を「子どもがいるから」で片づけると読み間違えます。効いているのは子どもの存在そのものじゃなくて、支出が増えて取り崩しペースが上がったことです。
- 単身の生活費+家賃は月約25万円。子ども3人だと基礎生活費18.3万+養育費4.2万×3人+家賃12万で、月約43万円
- さらに5人で動くには車が要る。維持費が年約74万円
- 結果、1億円に対する取り崩しペースは3.0%から約6.0%へ
引出率がほぼ倍。だから76%です。ここまで分解すれば、当たり前の話ではあります。
月20万円の働き口が、そもそも見つかるのか
ここまで月収を自由に振ってきましたが、これは計算では出てこない話をひとつ。
月20万・30万を20年続けるって、実務的にはほぼ正社員です。「アクセルを緩めた働き方で月30万円」という仕事が、そもそもどこにあるのか。 この記事は数字の実験なので月収をスライダーみたいに動かしていますが、現実にはその働き口を見つけるほうが、たぶん難しい。私にも答えはありません。
数字の上では「月20万円で18%」ときれいに出ますが、そこは差し引いて読んでください。
余談: この検証、最初は車を入れ忘れていました
白状すると、ここまでの数字は一度やり直しています。最初は車なしで回していて、あとから「子ども3人で車なしはさすがに無理があるだろう」と気づいて入れ直しました。
そうしたら、完全リタイアの確率が31%から36%に動いたんです。年74万円の固定費1つで。ここは掘ると長くなるので、別の記事であらためて書きます。
ここから先は、あなた自身の数字で(再現チュートリアル)
ここまでの数字、全部あなたの手元で再現できます。LIFIREは無料・登録不要。手順は5ステップです。
ペルソナのデータをダウンロード
今回のモデルの設定をJSONにしてあります。本文の数字は上の1.5億円版で全部出ます。1億円版は、折りたたみで書いた「資産が足りないとどうなるか」を試したい人向けです。
前回の記事と違って、素のままインポートすれば本文の数値がそのまま出ます。生活費の書き換えは不要です。
LIFIREにインポート
LIFIREを開いて、左メニューの「設定」へ。下のほうにある「JSONエクスポート/インポート」の「インポート」から、さっきのファイルを読み込みます。これで40歳夫婦・子ども3人の前提が一発で入ります。
進路を切り替えて、完全リタイアの3パターンを見る
1.5億円版をインポートしたら、「教育」タブへ。子どもごとの進路パターンで、大学区分を国公立/私立に切り替えたり、中学受験のチェックを入れたりします。中学校・高校を私立にすれば、本文の「中学から私立」パターンです。
2人目・3人目に「1人目と同じ設定にする」のチェックが入っていれば、1人目を変えるだけで3人まとめて追従します。
サイドFIRE版は、就労フェーズを1つ足す
サイドFIREの数字を出すには、就労フェーズを1つ足します。「収入・税金」タブの「キャリア・タイムライン」を開いて、画面上部のタブが本人になっていることを確認したら、右上の「フェーズ追加」。
開始を40歳4月、終了を60歳3月、月次額面を20万円、雇用形態は会社員にします。これで本文の「月20万円」ケースです。月10万円で試すときは、雇用形態をパートにしてください。
手を動かすのはここだけで、あとは前提が全部入っています。1億円版を試すときも、足すフェーズはまったく同じです。
モンテカルロを回して「高精度で再実行」を押す
左メニューの「ダッシュボード」を一番下までスクロールして、「高度な分析・暴落テスト」の「詳細な分析機能を利用する」へ。この先の画面でモンテカルロ分析を実行できます。
上の画像が、1.5億円+月20万円を既定の500回で回した結果です。FIRE成功確率82%、つまりお金が尽きる確率は18%。本文の数字とほぼ同じですね。画面に出るのは成功確率のほうなので、この記事の数字は100から引いて読み替えてください。
結果が出たら、左上の「高精度で再実行(2,000回)」を押してみてください。試行回数が2,000回に増えて、本文とまったく同じ条件になります。計算は重いので1分ほど待ちます。
それでも、本文とピッタリにはなりません
モンテカルロは毎回違う乱数の並びで回すので、同じ条件でも数字は揺れます。既定の500回だと±4ptくらい平気で揺れるので、本文の18%が手元では14〜22%あたりに見えることがあります。「高精度で再実行」を押せば±2pt程度まで縮みますが、それでも完全一致はしません。バグではなく、この計算方法の性質です。
この記事の数字を1pt単位で読まないでください。「35%と36%はほぼ同じ」「36%と49%は明確に違う」くらいの粒度で見るのが正しい使い方です。
まとめ
数字を並べ直すと、こうなります。
持ち帰ってほしい数字は、3つだけです。
| ケース | お金が尽きる確率 | 感想 |
|---|---|---|
| 前回の単身・1億円で完全リタイア | 24% | いける? |
| 子3人・1.5億円で完全リタイア | 36% | 厳しい |
| 子3人・1.5億円+月20万円を20年 | 18% | いける? |
子ども3人での完全リタイアは、1.5億円あってもかなり厳しい。ここは正直に書いておきます。
でも、悲観する話でもないと思っていて。月20万円を足すだけで、単身1億円で完全リタイアするより安全側に立てる。完全に辞めるか、今のまま走り続けるかの二択じゃないんですよね。その間に、けっこう広い着地点があります。
そして、この記事の数字はあくまで架空のモデルのものです。子どもの年齢差ひとつで無償化の効き方が600万円変わる、みたいな世界なので、平均の話を読んでいても自分の答えは出ません。自分の生年月日と、自分の子の年齢と、自分の生活費で回してみてください。
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