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「FIRE後は暇になる」問題。1年3ヶ月の育休が適性テストになった
ここ数ヶ月、FIREに必要なお金の話ばかり書いてきました。4人家族でいくら要るのか。お金が尽きる確率は何%か。「いくら必要か】の数字は、だいぶ見えてきました。
でも、ずっと答えを出していない問いが残っていました。会社を辞めたあと、毎日何をして過ごすのか。これは自分自身と対話する必要があります。
こんにちは、金育SEのまさ(@kinikuse)です。
いま、2人目の育休で3ヶ月休んでいます。1人目のときは1年休みました。合わせると1年3ヶ月、会社に行っていない期間があることになります。
この1年3ヶ月が、気づいたらFIRE後の生活を試す機会になっていた、という話です。
もちろん育休なので子育てがメインです。でも夫婦育休なので自分の時間がかなり多いんです。そんな中でも育児以外でやることがたくさんありました。暇だったことは一度もありませんでした。育児がなかったとしても、たぶん暇じゃなかったと思うんですよね。
FIREを止める壁は2つあって、片方しか計算できない
FIREを考えるときの不安って、大きく2つに割れます。
- お金が尽きないか。
- 時間が余りすぎないか。
前者は数字で殴れます。自作のシミュレーター「LIFIRE」で、家族構成も引き出す割合も動かして、お金が尽きる確率まで出しました。4人家族なら1.8億円積んでも5回に1回は尽きるとか、確率をゼロに近づけようとすると逆に会社を辞められなくなるとか。そのへんは最近ずっと書いてます。
でも後者には入力欄がありません。「趣味あり/なし」のチェックボックスなんて、どこにも用意できない。
世の中を見ると、早く辞めたい人はかなり増えています。パーソル総合研究所の調査では、20代の男性で「50歳以下でリタイアしたい」と答えた割合が2017年の13.7%から、2024年は29.1%へ。7年で倍以上になりました1。
その一方で「FIREしたけど暇で結局働き始めた」という話も、同じくらい流れてくるわけです。
| お金の壁 | 暇の壁 | |
|---|---|---|
| 中身 | 資産が尽きないか | 時間が余りすぎないか |
| 測り方 | シミュレーターで計算できる | 実際に休んでみるしかない |
| 私の進捗 | だいたい出した | ← いまここ |
計算できるほうばかり手をつけて、できないほうを放置しがち。
5年前の自分が投げた質問に、まだ答えていなかった
実は同じ話を、5年前にも記事にしています。2021年に書いた「FIREは『経済的自由』と『早期リタイア』を分けて考えるべき」という記事。その締めがこれでした。
「会社をやめた後、どんなことを実現したいですか?それは自信を持って人に自慢できますか?」
この質問に明確な回答が出せる人はきっとFIRE後も幸せな生活が送れるはずです。
読者に質問を投げておいて、自分は答案を出してなかったみたい。
当時の記事では、早期リタイアのデメリットも並べていました。社会とのつながりが薄くなる。家族の理解が得られない。子供の教育に良くない。ボケるかもしれない。
この記事は、そのうち「暇」「家族」「子供」の3つについて、5年越しに答え合わせをする回です。
育休は、FIREの模擬試験としてかなり条件が近い
「育休で暇じゃなかった」を感想で終わらせると、ただの日記になります。なぜそれがFIREの参考になるのかを、先に整理させてください。
FIRE後の生活を要素に分解して、有給や年末年始の休みと並べてみました。
| 条件 | 有給・年末年始 | 育休 | FIRE後 |
|---|---|---|---|
| 期間 | 数日〜1週間 | 1年3ヶ月 | 無期限 |
| 平日の昼に家にいる | ほぼない | 毎日 | 毎日 |
| 収入が労働と切れている | ×(有給は働いた対価) | ○(給付金) | ○(資産) |
| 会社の判断から離れられる | △(連絡は来る) | △(たまに見る) | ○ |
| 生活のリズムを自分で決める | △(休み明けが前提) | ○ | ○ |
| 夫婦が同時に家にいる | △ | ○ | ○ |
| 戻る場所がある | ○ | ○ | × |
| 終わりの日が決まっている | ○ | ○ | × |
下の2行は、はっきり違います。育休には復帰日があるし、会社に籍も残っている。ここを「同じようなもの」と言い張るつもりはありません。
ただ、上の6行が全部そろう経験って、会社員には育休以外にほとんどないんですよ。
長期の休職やサバティカル休暇という手もありますが、そもそも選べる人が少ない。その点、育休は制度として誰でも取れます。男性でも1年取れる。私は1人目のときに実際そうしました。
平日の昼間に家にいて、収入が働いた時間と切り離されていて、何時に起きて何をするかを自分で決める。この状態を1年以上続けられるのは、人生でここだけかもしれません。
1年3ヶ月やって、暇だった日は一度もなかった
で、結果です。
まず正直に言うと、育児が大変だから暇じゃない、というのは当たり前です。それを「FIREでも暇にならない証拠」にするのはズルい。
なので、育児以外に何が積み上がったかを並べます。
| やったこと | いまの状態 | ひとこと |
|---|---|---|
| FIREシミュレーター「LIFIRE」の開発・公開 | 継続中 | 2月に着手して7月に公開 |
| ブログの再開 | 継続中 | 去年までゼロだったけど、数日に1本のペースで復活 |
| 息子向けのゲームを毎朝1本 | 継続中 | 後述します |
| 家計簿アプリ・資産管理アプリの自作 | 継続中 | 自分用。市販のに不満があって |
おもしろいのは、まとまった時間はむしろ減ったことなんですよね。上の子の相手をしながら下の子の面倒を見ていると、机に向かって2時間集中、みたいな時間は消えます。そのへんの話は別の記事に書きました。
それでも手は止まらなかった。細切れの15分でも、やることはいくらでもあるんです。
やりたいことは無限にあるし、とっても楽しい。好きなことをやりながら生きていくっていうのは、自分に合ってるんだと思います。
これは才能だと思う。
言い方が偉そうですけど、逆のことを言ってます。これはたぶん運とか性質の話であって、努力で身につけたものじゃない。だから「誰でもやりたいことは見つかりますよ」なんて言うつもりはないです。
大事なのは、この才能が自分にあるかどうかを、事前に測れたってことのほうです。
毎朝ゲームを作って、息子にバグを報告される
さっきの表に書いた「毎朝1本」の話をします。ここ1週間くらいハマってるやつです。
GoogleのAI Studioで息子向けのゲームを作って、Cloudflareに置いて、タブレットで遊べるようにする。これを毎朝1本ずつ作ってます。
1週間も続けると、息子が朝リビングに来るなり「今日のパパゲームは何かな?」と言うようになりました。遊べる時間は決めてるので1日中やってるわけじゃないですが、そのうち感想が返ってくる。
ここバグってるよ
これ正解ないから変だよ
それを直して、また遊んでもらう。このサイクルがめちゃくちゃ楽しいんですよね。
なんで楽しいのか考えてみたんですが、誰かに作ったものを使ってもらって、直して、また使ってもらうのが、仕事でも好きだったからだと思います。私の本業はSEで、アプリを作って使ってもらうのが仕事です。それと中身が同じなんです。違うのは相手が客先じゃなくて4歳児ってだけ。
ここが、たぶん一番効いています。
FIRE後にやることをゼロから探そうとすると、そりゃ大変です。でも本業と趣味がもともと重なっていれば、探す必要がない。私の場合、仕事も趣味も「パソコンで何かを作ること」で完全に一致しちゃってるので、会社を辞めても、やることの中身はほとんど変わらなかったな、と。
夫婦で1日中一緒にいても、平気だった
育休を取ってると、よく言われる言葉があります。
「旦那と一日中一緒にいれるね」
だいたい半分くらいは「大丈夫なの?」が混ざってます。笑
これ、FIRE後の生活で一番テストしづらいところだと思うんですよ。夫婦が毎日24時間同じ家にいる状態って、有給を数日取ったくらいじゃ再現できません。年末年始でもせいぜい1週間。
結果は、苦じゃなかった。うちは夫婦仲が悪いわけでもなく、むしろ良好で、ずっと一緒にいてもストレスがない。会社を辞めても二人でやっていける自信はあります。
ただ、これを「うちは仲がいいので」で終わらせると惚気なので、成立してる理由を考えてみました。笑
たぶん、私が家事育児にちゃんと手を出してるからです。1日中家にいる人ではなく、1日中戦力である人になってる。上の子の送りも下の子の風呂も、私の担当として回ってます。
逆に言うと、家のことを何もせずに家にいるFIREは、ここで詰まる気がしますね。妻からすれば、平日の昼間にソファでスマホを見てる大人が増えただけになるので。
息子にとって、私の仕事はもともと「家のデスク」だった
年初に「FIREしたら『無職』の親を子供はどう思うか」という記事を書きました。両親から心配されたのがきっかけです。
そのとき立てた仮説が、パソコンに向かって何かに打ち込んでる姿さえ見せていれば、子供に「無職」とは映らないんじゃないか、というもの。
で、いま3ヶ月ずっと家にいるわけですが、息子から言われるのはこれです。
お仕事いつ終わるの?
早くお仕事やらせてよ
私、休職中なんですけどね。笑
息子の中では、パパはすでに働いている人として処理されてるみたい。理由ははっきりしていて、子供にとっての「仕事」の定義が、通勤じゃなくて場所になっているから。
| FIRE前の景色 | FIRE後の景色 | 子供から見ると | |
|---|---|---|---|
| 通勤して夜に帰る家庭 | 会社に行く | 家にいる | 定義が壊れる |
| 家のデスクで働く家庭 | 家のデスク | 家のデスク | 何も変わらない |
「行ってきますと言って、夜遅く帰ってくる」がパパの仕事の定義になっていたら、辞めた瞬間にその定義が消えます。でもうちは、もう何年も家のデスクで仕事をしてる姿しか見せてない。だから辞めても、息子の側の景色は変わらないはずなんです。
ちなみに、寝る前に毎日「今日楽しかったこと」を話す時間があるんですが、昨日は15分くらい続きました。彼自身の手でアプリを作ったり、メガシンカ図鑑を作ったり、コクワガタの繁殖を始めてみたり、初めてのことを何個もやった日だったので。
「これからも初めてのことをいろいろやりたい」と言ってもらえて、親冥利に尽きるというか。この時間をちゃんと確保できるかどうかが、そもそもFIREしたい理由の中心です。
それでも転職ではなく、FIREを選ぶ理由
そもそも、なんでFIREしたいと思い始めたのか。
4年くらい前です。1人目が生まれる直前、朝9時から翌朝7時まで働くような日が続く時期がありました。あれで「こんな働き方をずっと続けるのは無理だな」と思ったのがきっかけ。
普通に考えたら、答えは転職です。もっと緩い会社に移ればいい。実際これ、いまでもかなりありな選択肢だと思ってます。
それでも選ばなかった理由は、この2年くらいで今の会社で無理なく働ける状態を自分で作れたからです。仕事の進め方も、力の入れどころも、だいたい掴めてきた。転職は、それをいったんゼロに戻す行為でもあります。
| 項目 | 【転職】して緩い会社へ | 【今の会社】でFIREまで走る |
|---|---|---|
| 環境に慣れるまでの時間 | かかる | 0 |
| 人間関係の作り直し | 必要 | 不要 |
| 育休など制度の使い勝手 | 要確認 | 1年取った実績あり |
| 働き方の自由度 | 会社次第(賭け) | もう把握してる |
| ゴール | 定年まで | 資産が届いた日 |
念のため書いておくと、転職が悪いという話ではないです。私の場合は手持ちのカードがこうだった、というだけ。緩い会社に移って定年まで働くほうが幸せな人もたくさんいると思います。
ただ私は、転職コストを払って新しい環境に行くより、今の会社でぬるっとお金を貯めてFIREするほうがいいという結論になりました。転職ではなくFIRE。理由はそれだけです。
未来の自分がこの記事を読み返したとき、「そういう理由だったな」と思い出せるように書いておきます。
育休では、答えられなかったこと
ここまで威勢よく書いてきましたが、育休で再現できていないことも当然あります。むしろこっちを書かないとフェアじゃない。
- 終わりの日がある:育休には復帰日があります。期限つきの自由と、期限のない自由で、心の動き方が同じとは限りません
- 戻れる場所がある:会社に籍がある安心感を、まだ差し引けていない
- 人付き合いは年単位でしか減らない:1年3ヶ月で社会とのつながりが薄くなったかどうかは、正直まだ分からないです
- 子供が手を離れたあと:いまやりたいことの中心は子育てです。子供が巣立ったあとに何をしてるかは、この期間では測れない
- お金の出どころが給付金:資産を取り崩して暮らす心理は、まだ味わってません。確率の計算はしましたけど、あれは数字の話なので
このへんは、正直やってみないと分かんないですね。特に4番目は20年以上先の話なので、いま考えても答えは出ないと思ってます。
そのうえで現時点の総括を書くと、お金と、家庭生活と、子供への影響。この3つをまとめて考えて、今のところ、うまくいく気はしています。
まとめ
FIREを止める壁は2つあります。
お金のほうは計算できます。必要な額も、尽きる確率も、シミュレーターに入れれば出ます。
暇のほうは計算できません。実際に休んでみるしかない。そして育休は、その実験ができる数少ない機会でした。結果、暇だった日は一度もなかった。
ただこれ、才能側の話かもしれないんですよね。誰でもそうなるとは思ってません。大事なのは、自分でテストできると気づくことのほうです。
明日からできることを2つだけ。
- 暇の側:自分用のテストを作ってみる。育休が取れるなら最強です。取れないなら、有給を続けて使う、週末に「会社のことを一切考えない48時間」を作る、でもいい。仕事がないことを想像するとどんな気持ちかを改めて考えてみることが必要かと
- お金の側:金額のほうはLIFIREで出せます。先に出しておくと、暇の話が「いつかの空想」じゃなくて現実の話になります
5年前の自分に、いまの自分はこう答えます。
実現したいことは、今とほとんど同じです。パソコンで何かを作って、誰かに使ってもらって、直して、また使ってもらう。あとは、子供と過ごす時間をもっと増やすこと。それだけです。
自慢できるかは、正直まだ半分くらいです。暇にならない自信はつきました。夫婦でやっていける自信もつきました。子供に「無職」とは思われなさそうなことも、なんとなく分かりました。それを胸を張って言えるようになるには、あと数年かかる気がします。
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早期リタイアを希望する20〜30代の若手男性が増えているのはなぜか(パーソル総合研究所)。「働く10,000人の就業・成長定点調査」より。 ↩




